ドイツのレコードレーベル Tokyo Dawn Records がリリースしているフリーのコンプレッサープラグイン TDR Feedback Compressor II のベータテストが完了して正式に Ver.2.0 としてリリースされていました。
利用は無料で、Windows 用は VST、OS X 用は VST/AU が用意されています。
フィードバック方式では、その名の通り入力シグナルをゲインリダクションして、再度レベル検知にかけてリダクションを行う処理を何度も繰り返して調整してから出力します。
利点としては、フィードフォワード方式に比べてより自然で音楽的なコンプレッションが得られることが挙げられますが、ソフトウェア上で実現するのにはプログラムの処理がより複雑になり CPU にかかる負荷が大きくりがちなのが弱点とも言われ、品質と負荷のバランス調整が難しいところでもあります。
また、フィードバック方式を採用しているからといってクラシックなアナログコンプを再現したのではなく、作者の愛と膨大な時間のなかで作られた独自設計処理のデジタルコンプレッサーであると明言されています。
TDR Feedback Compressor の操作マニュアル PDF より抜粋 (注釈は差し替え)
例えば上図のように、左側のような狭いピークがあった場合は "RELEASE PEAK" のクイックなリリース(水色の範囲)が適用されたあとに、続けて "RELEASE RMS" のスローなリリース(薄橙色の範囲)に自動で切り替わります。
また、持続音のような長いピーク場合はスローな "RELEASE RMS" (薄橙色の範囲)だけが適用されます。
また、"PEAK CREST" を調整することで、幅の狭いピークをどちら側に反応させるか微調整することができます。
基本的にピークパスのほうが RMS パスより速く検知されるので、推奨値の範囲は RELEASE PEAK が25~200ms、RELEASE RMS が160ms となっています。
パネルの左上から順に
TDR Feedback Compressor を知って触ったのは今回が初めてで、最初はレーベルが出しているオマケ的なフリープラグインかと舐めてかかってたら、触っていくうちにその考えは早とちりだと気づかされました。
おそらく PEAK/RMS リリースの自動切り替えは、フィードバック方式コンプの処理に組み込み易いという考えだと思われますが、アイディアだけでなくちゃんと実用的な仕上がりになっているのが素晴らしく感激しました。
ここしばらくフリーのプラグインは食傷気味だったので、久しぶりにいいプラグインに出会えてラッキーでした。
これからどのように進化していくのか楽しみです。
[関連サイト]
Tokyo Dawn Records
TDR Feedback Compressor II
利用は無料で、Windows 用は VST、OS X 用は VST/AU が用意されています。
フィードバックタイプのコンプ
ハード、ソフトを問わず最近のコンプレッサーの主流は、入力シグナルを基準にレベル検知してゲインリダクションするフィードフォワード方式が多いのに対して、TDR Feedback Compressor はクラシックなコンプレッサーで多く使われていたフィートバック方式を採用しています。フィードバック方式では、その名の通り入力シグナルをゲインリダクションして、再度レベル検知にかけてリダクションを行う処理を何度も繰り返して調整してから出力します。
利点としては、フィードフォワード方式に比べてより自然で音楽的なコンプレッションが得られることが挙げられますが、ソフトウェア上で実現するのにはプログラムの処理がより複雑になり CPU にかかる負荷が大きくりがちなのが弱点とも言われ、品質と負荷のバランス調整が難しいところでもあります。
また、フィードバック方式を採用しているからといってクラシックなアナログコンプを再現したのではなく、作者の愛と膨大な時間のなかで作られた独自設計処理のデジタルコンプレッサーであると明言されています。
主な特徴
- フィードバック方式のコンプレッション
- 内部演算精度は64bit 浮動小数点
- 元レートの8倍まで実行する高精度なマルチレート処理構造
- デルタオーバーサンプリングされた信号処理
- 3種類(3dB、6dB、12dB/Oct)のサイドチェインフィルタースロープ
- 超高速で自然なサウンドコンプレッション
- ピークと RMS のリリースを独立してコントロール可能
- 独創的なコントロールパネルデザイン
- メインスレッショルドを相対補正する CREST パラメーター
- ステレオバスのために最適化された高度なリンクオプション
- 原音との出力差分を確認できる DELTA プレビューモード
- 処理を中断させないレイテンシーフリーの並列バイパス
- DRY/WET が調整可能なパラレルコンプレッション
リリースの自動切り替え
このコンプの2つめの大きな特徴は、ピークと RMS のパスを並行して検出して、入力シグナルの種類に合わせて自動でリリースを切り替えてくれるところで、マスタリングのトータルコンプなとで重宝する機能です。TDR Feedback Compressor の操作マニュアル PDF より抜粋 (注釈は差し替え)
例えば上図のように、左側のような狭いピークがあった場合は "RELEASE PEAK" のクイックなリリース(水色の範囲)が適用されたあとに、続けて "RELEASE RMS" のスローなリリース(薄橙色の範囲)に自動で切り替わります。
また、持続音のような長いピーク場合はスローな "RELEASE RMS" (薄橙色の範囲)だけが適用されます。
また、"PEAK CREST" を調整することで、幅の狭いピークをどちら側に反応させるか微調整することができます。
基本的にピークパスのほうが RMS パスより速く検知されるので、推奨値の範囲は RELEASE PEAK が25~200ms、RELEASE RMS が160ms となっています。
パラメーターの解説
ついでに各パラメーターの簡単な説明も書いておきます。パネルの左上から順に
- SLOPE (SIDE-CHAIN HP FILTER)
サイドチェイン入力のハイパスフィルターの種類 (Off、3dB/Oct、6dB/Oct、12dB/Oct) - FREQUENCY (SIDE-CHAIN HP FILTER)
サイドチェイン入力のハイパスフィルターのカットオフ周波数 (30~400Hz) - SIDE-CHAIN STEREO DIFF
サイドチェイン入力のステレオイメージのリンク範囲 (0~100%)
100% でオリジナル定位、0% で L/R モノラル - THRESHOLD
コンプレッションが開始されるレベルのしきい値 (0~-60dB) →グラフの赤線 - PEAK CREST
PEAK/RMS パス検知の自動切り替えのレベルしきい値 (0~12dB) - SOFT KNEE
コンプレッションカーブの屈曲線(ニー)の緩やかさ (0~20dB) - PEAK RATIO LIM
ON にすると RATIO を動かしても PEAK パスが 7:1 に固定される - RATIO
PEAK/RMS のコンプレッション比率 (1.0:1 ~ 7.0:1) →グラフ赤線より上の青線の傾き - ATTACK
コンプレッションがかかり始める時間 (0.01~500ms) - RELEASE PEAK
PEAK コンプレッションのリリースタイム (5.0ms~2.0s) - RELEASE RMS
RMS コンプレッションのリリースタイム (5.0ms~2.0s) - TRANSFER FUNCTION GRAPH / GAIN REDUCTION DISPLAY
グラフには THRESHOLD、KNEE、RATIO、PEAK CREST などが反映される - PRECISE / ECO MODE
高負荷時などで ECO にすると動作精度と負荷が若干低くなる (通常は PRECISE のままでよい) - i
バージョン情報表示、ノブの操作モード、著作クレジット表示など - DELTA
DRY/WET の差分音声を確認できる - BYPASS
コンプレッション処理をスキップしてDRY をそのままを出力 - MAKEUP
DRY MIX 前のコンプレッション出力 (WET) のゲイン補正 (-60~18dB) - DRY MIX
パラレルコンプレッションの DRY/WET の割り合い(Off、-60~0dB)
ただし 0~100% の DRY/WET ミックスコントロールではないことに注意 - OUT GAIN
トータル出力のゲイン補正 (-12~12dB)
TDR Feedback Compressor を知って触ったのは今回が初めてで、最初はレーベルが出しているオマケ的なフリープラグインかと舐めてかかってたら、触っていくうちにその考えは早とちりだと気づかされました。
おそらく PEAK/RMS リリースの自動切り替えは、フィードバック方式コンプの処理に組み込み易いという考えだと思われますが、アイディアだけでなくちゃんと実用的な仕上がりになっているのが素晴らしく感激しました。
ここしばらくフリーのプラグインは食傷気味だったので、久しぶりにいいプラグインに出会えてラッキーでした。
これからどのように進化していくのか楽しみです。
[関連サイト]
Tokyo Dawn Records
TDR Feedback Compressor II